2017/04/10 (月)

3月から4/9までの映画ジャーナル。


先ず前回の訂正から。リンデホフではなくリンデロフ、ミミ・レダーの正しい発音はミミ・リーダー、ダクラス・サックハイムではなくダニエル・サックハイム。

3/2DVD「SONG OF SUMMER」A− 47年ぶりにケン・ラッセルの最高作を見る。英国の偉大なる作曲家フレデリック・ディーリアスの晩年とエリック・フェンビーとの師弟愛を、ラッセルとフェンビーの共同脚本で映像化したBBC音楽家トリロジーの一本。マックス・エイドリアン入魂の演技は今見ても鳥肌。クリストファ・ゲーブル、モーリーン・プライヤとの三人芝居は極上の宝石。

3/5 DVD「ALWAYS ON SUNDAY」B ラッセルのセンスで軽快に描いたアンリ・ルソーの伝記。ジャリとの関係を中心のファース。

3/6 DVD「MANH(A)TTAN SEASON 1」A 10話まとめての評価。前記。

3/8 みゆき座にて「トリプルX」C− すべてが最悪。

3/8 シャンテシネにて「お嬢さん」C すべてが退屈。ハ・ジョンウの日本語芝居はお粗末の極み。


3/10 DVD「ベストセラー」B− いい話なのに演出脚本が凡庸。ジュード・ロウのノース・キャロライナ訛りの大芝居が最悪。

3/14 新宿にて「コクソン」C ナ・ホンジンはバカになったのか。

3/20 DVD「アース」B 綺麗なだけで単調。

3/21 DVD「ロスト・バケーション」A− ブレイク・ライヴリーの勇姿と演技力にただただ感服。「カフェ・ソサイエティ」が愉しみ。

3/22 DVD「キャロル」C 原作の風味ゼロ。ムードだけの凡作。

3/22 DVD「セデック・バレ」C アクション以外すべてが稚拙。

3/25 WOWOW「10クローバーフィールド・レーン」A− 三人の演技よし。

3/26 WOWOW「海よりもまだ深く」A− 是枝作品でマイベストかも。

4/1 DVD「MANH(A)TTAN SEASON 2」A− 10話総合評価。アビーがソープキャラに成り下がり1939年、1944年(メインの時間軸)、1945年のカットバックに混乱あるもののフランクの行動倫理で救われる。

4/4 シャンテシネ「ムーンライト」B− 大落胆の凡作。

4/5 DVD「THE LEFTOVERS 1」A+ 最初の6話まで一気に見る。キャリー・クーン光り輝く。

4/6 DVD「THE LEFTOVERS 1」A+ 7話から10話。ジャスティン・セロー光り輝く。

4/7 DVD「HELL OR HIGH WATER」A− ジェフ・ブリッジス光り輝く。

4/9 DVD「FARGO SEASON 2 EPISODE 1」C− キッチュではない悪ふざけの幼稚さ。2話以降持ち直すことを期待しつつ大罵倒。キルステン・ダンストってこんなに下手っPだっけ?



ドジャース打線がやっと左腕を攻略できた。

明日はカブスのレスターだからまた打てないか?

ロバーツ監督は相手投手が右だろうが左だろうがベストのメンツで打順だけ入れ替えるべき。左腕だからと右打者ばかり並べるのは相手投手を助けるだけ。

いずれにせよ、ローガン・フォーサイスの獲得は大正解だと思う。打席でも守備でもセンスがいい。それに比べプイーグ。バッティング荒いし走塁ミスもあるし、アタマの悪さは相変わらず。我がアンドレがDLから戻って来たらライトは彼に委せて放出した方がいい。

ところで、マエダ君。いつになったら7回まで投げることができるの。


2017/04/08 (土)

CARRIE COON THE GREAT!

THE LEFTOVERS SEASON 1

かつては「ロンサム・ダブ」に酔いしれ、「ダウントン・アビー」最初の3シーズンに至福を感じ、近年では「TRUE DETECTIVE SEASON 1」、「FARGO SEASON 1」、そして「MANH(A)TTAN」のSEASON1&2という傑作TVスペシャルドラマに魅せられて来たワタシ。

一昨日見終わった「THE LEFTOVERS」のシーズン1は、今まで見て来た傑作シリーズ以上のインパクトがあったのです。驚天動地の面白さでした。2014年にHBOで放映されたシリーズです。翌年シーズン2が放映され、一年休んだのち、今年4月になってシーズン3が再開されたようです。

シーズン1は、パイロットを含む10話のシリーズ全体のバランスが実に巧みで、主要登場人物のアーチが圧倒的に傑出しているのです。人物が生きている。

功労者は、先ず原作小説を書いたTOM PERROTTAでしょう。そして、ペロッタと協力してシリーズを立ち上げたデイモン・リンデホフがえらい。彼は人気シリーズ「ロフト」の生みの親のひとりでもあります。このふたりが共同でパイロット及び数話のエピソードの脚本も書いています。



演出的にはアクション大作でメキメキ腕を上げているピーター・バーグが開巻2話に参加してトーンを確立し、そのあとをキース・ゴードン #3、カール・フランクリン #4 & 6、ミミ・レダー #5 & 7 & 10などの映画畑でも活躍したヴェテランがつないでいます。

TV畑のミシェル・マクラレン #8とダクラス・サックハイム #9もそれぞれ人気シリーズ「ブレーキング・バッド」や「THE AMERICANS」などで何回かエミー賞候補もしくは受賞している実力派クラフツマン。

特に私が傑出していると思ったエピソードは、3、6、9、10です。ただそれも演出の力というよりは、プロット展開の妙味です。

私は「ロフト」には惹かれませんでした。人間よりも謎で牽引するプロットが好みではなかったし役者にも興味がなかった。「ブレーキング・バッド」は乗り遅れたという感じ。

こちらは、以前書いたように、「マンハッタン」と同様、「この役者が見たい」、という観点からDVDを購入したわけです。「マンハッタン」はお目当てのレイチェル・ブロスナハンには心を動かされることはなかったけれど、こちらは、まさに、HIT THE BULL’S EYEでありました。

それが、CARRIE COON。



このシーズン1は、彼女が「端役」から「主要な脇役」となり「力強いヒロイン」となっていくアーチが素晴らしいのです。

そのプロセスに於ける彼女の出番すべてが、初々しかった頃のメリル・ストリープに匹敵する「透明感ある天才のもたらす存在感」に根を張っています。

決してOVER THE TOPに走らず、柔軟でじわりと迫るセックスアッピールがある。しかも、エピソード7では警察署長ケヴィン・ガーヴィを演ずる主役のジャスティン・セローとの全裸のファックシーンまである。そして、シーズン最後のナレーションまで、彼女が受け持っている。すごい女優です。

パイロットではキャリー演ずるノーラ・ダーストは、終盤の10/14メモリアル集会で夫と子供ふたりを失った主婦としてスピーチをする点描しかありません。そこに悲劇のあと台頭した新興宗教グループGUILTY REMNANTが乱入して彼女は忘れ去られてしまう。ギルティ・レムナントというのは「やましさの名残り」とでも訳しましょうか。オウムやサイエントロジーを連想する人もいるかもしれません。

エピソード2ではノーラの政府機関での仕事(消失者家族への調査)と拳銃の携帯が、ケヴィンの娘とその遊び仲間に目撃されます。しかし、これも点描。

エピソード3は牧師マット・ジェイミソンが主役です。演ずるは英国の性格俳優で、かつては主演作もあったクリストファー・エクルストン。

ここで初めて、キャリーの演技的見せ場が出て来ます。夫の資産を受け継いだ彼女のところに、兄のマットが金を借りに来る設定です。13万5千ドルを翌日の夕刻までに銀行に支払わねば、教会が売られてしまうと泣きつく。この演技合戦が、すごい。

さらにマットの金策に奔走する様が実にテンポよく、しかも時々シュールで、ここから私は一気にシリーズの舞台となるニューヨーク州の小さな町メイプルトン=わが町という愛着が湧いて来たわけです。



エピソード4で、ケヴィンとノーラの最初の会話が記録され、エピソード5でも彼女は点描にとどまり、エピソード6”GUEST”となるのです。ノーラが主役です。

タイトル前のエピソードで、なにゆえ彼女が銃を携帯していたか、明かされます。これが、悲劇を体験した人間の地獄めぐり、彼女なりの耐え忍ぶ儀式。大迫力の演技的見せ場でもあります。

敢えて詳細は省きます。この素晴らしさはスターチャンネルの吹替え版では絶対に味わえないでしょう。珠玉の台詞も、演技のトーンも、日本語では大袈裟なレベルに堕しているに違いありません。

多分、次回、私が演技ワークショップを開くとしたら、このシーン、娼婦とノーラの寸劇を自分なりに訳して、教材として使うでしょう。それまでには原作も読んで(文学の香華を感じさせるくだりですから原作には必ずあるでしょう)ニュアンスも間取りを広く取って。



さて。

「レフトオーヴァーズ」の物語のキモは何か、敢えて避けてここまで書いて来たわけです。

それは、聖書の世界で言えば、THE RAPTURE、日本語だと「携挙」というイエスの再臨にからむ信徒の昇天、21世紀を生きる我々にとっては911、もしくは311の悲劇のメタファーといった突然の喪失が、この壮大な家族と人類の再生ドラマの原点です。

10月14日に全世界の人口2パーセントが文字通り、消えた。その3年後、ニューヨーク州の小さな町の住民たちがどう生きていくのかを、警察署長のケヴィン・ガーヴィの一家を中心に描かれて行きます。

続きはいずれ。


2017/04/05 (水)

がっつり落胆を食う。


最近これほどがっくりした映画はない。期待が大き過ぎたこともあるかもしれない。それでも、これは・・・。

この程度の平板な作品「ムーンライト」を知性あふれる人々が「名作」だと称え、アカデミー賞作品賞と脚色賞と助演男優賞を与えたとは!

何が悪いわけではない。良心作ではある。しかし、新人監督が低予算でタイトなスケジュールで、とりあえずまとめて見せたという以上のなにものでもない。

よく言えば「ポエティック」。しっかりとサブジェクトを見据えて言えばリアリティに欠けている。表層的な登場人物がやたら間を空けた台詞をぽつりぽつりと喋りまくる。江戸っ子なら、てやんでえ、何を気取ってやがるってとこか。



もともとが低予算舞台の戯曲だったというのがよくわかる。舞台のような三幕構成で、登場人物すべてに生活臭、つまり、舞台に登場していないときの現実感が感じられない。

先ず、脚色がお粗末。脚色と監督のバリー・ジェンキンス唯一の功績は主人公シャイロンと親友ケヴィンの浜辺の「セックス」だ。しかし、それも次の瞬間にはおよそ使い古されたいじめっ子の仕掛けに単純にケヴィンが踊らされて、実に幼稚な展開に堕していく。

虐げられたものの悲しみの根源を描くには手数が足りない。

全米に於ける助演男優賞を席巻したマハーシャラ・アリの演技は、それほどすごいのかと言うと、これまたとてつもなく褒め過ぎ。アリはいい役者だが、名演というレベルではない。

心優しいヤクの売人というだけで、最底辺の淵を生きている人間の逞しさに欠ける。



例えば、「MONSTER’S BALL」。邦題は「チョコレート」。あのぽつりぽつりの台詞廻しには詩心があった。心に刺さる間が、リズムを奏でた。

「ムーンライト」の台詞にはそういう味覚と風味がない。英語の台詞は平板。日本語字幕は平均以下。

「アトランタ州」などという初歩的な誤植も出て来たのには驚いた。

リトルの母親が車内でヤクをやっているくだりなど、なにゆえマハーシャラ演ずる売人が激怒するのか普通の日本人観客にはわからなかったのではないか。まるでヤクをやるのが悪いような言い方になっているが、要は、ブツを売買したその現場の車内で薬物使用しているから慌てて手下を怒鳴り、車に走り寄るわけだ。そこの一言一言のニュアンスが、字幕に生かされていない。

ゲイ・テーマという観点では「ブロークバック・マウンテン」よりも劣るし、その世界の名作「ミルク」とは比べるすべもない。

黒人世界のカミングオブエイジものと比較するなら「プレシャス」の方が圧倒的にデキがいい。

双方の母親を比べても差は歴然だ。勿論、「プレシャス」のモニークはアカデミー賞の助演女優賞を受賞し、こちらのナオミ・ハリスはノミネートどまりであったけれど、私には、そのノミネートすら疑問だった。やはり、現場に3日しかいることのできなかった「お手軽イージー」な感情垂れ流しの力芝居なのだ。役のアーチというものはゼロ。

OSCAR SO WHITEという物議の翌年であればこその作品賞だろう。あまりにも政治的だ。うんざりした。作品賞発表は間違えたままにして「ララランド」受賞にしておけばよかった。



その落胆を抱え、とんかつの名店に行き、380グラムの特大リブロースかつを注文してしまった。

岩瀬恵子様がガイドを務める「東京とんかつ会議」なる番組を見てしまったために、うまいとんかつを食べたいと思って、わざわざ遠方まで遠征したのだが・・・。落胆を腹いっぱい食べることになった。

とんかつがマズいわけではない。それはそれで本当に「良心作」なのだ。しかし、とんかつはとんかつである。理想のとんかつ、夢のようなとんかつ、芸術的なとんかつなどない。手近にある店で、食べることができればそれでよいのが私にとってのベストなとんかつ。

「東京とんかつ会議」のお墨付きはなくとも、食べログでTOP20に入っていなくともよい。今そこにあるとんかつが一番。

「ムーンライト」もとんかつも、蘊蓄を傾けて論ずるものではない。

ああ、ドジャースは今年も左腕を打てない。二流の左腕投手に早くも完封負け。


2017/04/01 (土)

MANH(A)TTAN SEASON 2


予定より一週間遅れて昨日、「マンハッタン/シーズン2」が到着。全10話の4話まで昨夜見て、本日残りを鑑賞。

秘密と嘘のモンスターたちが犇めき、科学者の善意が打ち砕かれ、悪意が生き残る結末に、サム・ショウやトーマス・シュラミら作り手たちの品位を感じた。

シリーズ・フィナーレは1945年7月16日のトリニティ核実験。ここに至る善と悪の葛藤がかなりメロドラマチックに描かれている。TOO MUCH と思えるところもあるが、メッセージははっきりしている。

ポイントは、主要登場人物の家庭は結果としてすべて崩壊する。大量殺戮兵器の開発をする「国家」を、カーティス・ルメイをモデルにしたと思しきエメット・ダロウ大佐(ウィリアム・ピーターセン)に集約し「悪の象徴」として描いている。スパイ行為を働く科学者の正義にも言及する。



TOO MUCHのA級戦犯は、そもそもこのシリーズを見るきっかけとなったレイチェル・ブロスナハン演ずるアビーだ。

「村」のオペレーターたちが会話を盗み聞きしていたのは事実だろう。アビーの場合は、盗み聞いた「秘密」を必ずといっていいほど当事者にぶつけてしまう。この女はバカか、と思えるくだりが3つほどある。

ヒッチコックが宣ったように、子供をひとり産むのはわかる、三人となると猥せつだ、のセオリー。

「家政婦は見た」風の「電話交換手は聞いた」ですな。

そうしなければ編めないプロットなら捨てろよ、と叫びたくもなる。最後には、レイチェルの顔を見るのも嫌になった。



オッペンハイマーの愛人ジーン・タトロックの「自殺」に「国家の関与」を匂わせる政治性もある。ただし、自殺の日時は多少史実とは違う。

シリーズを見続けて一番感心したのは科学者の良心の代弁者となるフランク・ウィンターの造形だ。ジョン・ベンジャミン・ヒッキーが作品の脊髄にふさわしい味を出している。

最後の彼の行動は曖昧だが、FDRの死の直前に、科学者を集めて原爆製造の放棄を促すくだりには感動した。トルーマンが大統領になって科学者の善意が一気に踏みにじられていくプロセスがよくわかる。

戦前の日本に時計を逆戻りさせようとする妖怪が跋扈する日本ゆえ、この骨太の良心作を見せないバイアスが働いているのだろうか。

戦争とは、国家権力が大手を振って家族愛を奪い、人間性を崩壊させていくイヴェントなのだ。「マンハッタン」はそこをきっちりと描き切った。


2017/03/26 (日)

アメリカの美人女優はなぜこんなにうまいのだろう。


たまたまチャンネル代えで日本のTVドラマが目に入る。なんでこんなに下手なんだろう、と大騒ぎしたくなる役者が多々いる。殊に女優。名前は出さないけど。

脚本も演出もお粗末ということもあるが、根本は「演技」に取り組む姿勢だね。

アメリカの映画やTVではここのところ私にとっての「驚異の新発見」が相次いでいる。殊に女優。昨夜見つけたのは、メリー・エリザベス・ウィンステッドとキャリー・クーン。

キャリーは、「ゴーン・ガール」でも気にはなっていた。ベン・アフレックの双子の妹役だ。「ファーゴ」シーズン3の予告篇を見て、キャリー演ずる女警官の容姿に惚れた。ユアン・マクレガーやデーヴィッド・テューリスといった英国の演技巧者も出ているが、主役はおそらく彼女だ。で、HBOのシリーズ ”THE LEFTOVERS” でも28話に出ていることを知り、早速オーダーした。

メリーは、WOWOWで放映した「10クローバーフィールド・レーン」をたまたま見た。作品も面白かったが(ディミアン・チャズルが脚本に絡んでいる)メリーの演技に圧倒された。「ルーム」のブリー、「ドント・ブリーズ」のジェーンに匹敵する。

彼女以外の主役ふたりも素晴らしかった。ジョン・グッドマンは「バートン・フィンク」以来の怪演だし、ジョン・ガラガー・ジュニアは若手演技派の成長株だ。

メリーはPBS初のオリジナル・ドラマ “MERCY STREET” に主演しているというので、この南北戦争看護婦ドラマも見たくなってシーズン1と2をオーダーした。

そして、メリーとキャリーが共演しているのが「ファーゴ3」。放映開始が4月だからアメリカへ行かないと見ることができない。

見たい。早く見たい。



さらに「ザ・タウン」で見初めたブレイク・ライヴリー。

彼女の新作がTHE SHALLOWS。

邦題は「ロスト・バケーション」。「激突」の「ジョーズ」版。

私はブレイクの美しきアマゾネスぶりにしびれっぱなしだった。86分、ブレイクだらけ。タイム誌が年間ベスト10に選ぶだけのことはある。ヴィデオ遺言のくだりは涙涙涙。こういう芝居だよね、女優の真価が出るのは。

柴咲コウとか菜々緒とか、声の悪い女優は大河でわめき芝居をする前に、この情感を勉強しなくちゃいけない。名前出しちゃったよ。


 a-Nikki 1.02