2021/02/22 (月)

ゲーム再開を待ちながら。


次回作の脚本直しとずっとずっと先を見据えたリミテッド・シリーズのオリジナル脚本書きとロケハンと衣装合わせと映像シャワーの日々。

忙しいようで忙しくない。緊急事態宣言で夜が早いから。夜の映画館へ行けない。夜のメシヤもダメ。夜の日本があまり動いていないと思うと、忙しくない風に感じる。忙しい時間帯が限定されてしまうと心理的な多忙感が減少するのではないか。

2月のNETFLIXは「時の面影THE DIG」から入った。キャリー・マリガンとレイフ・ファインズはうまい。が、話が実話とはいえ、お粗末すぎる。俳優出身監督のセンスも悪い。セリフのずりあげが異常。使い過ぎだし長過ぎる。評価:C



NEFLIXドキュメンタリーもよく見た。「REMASTEREDサム・クック」は「あの夜、マイアミで」の影響。リアルなサム・クックは映画以上に黒人の権利を謳う活動家だったのだと納得。未だ闇に包まれているクックの死の真相を知りたくなる。評価:A-。

「ジョーン・ディディオンTHE CENTER WILL NOT HOLD」は俳優グリフィン・ダンが伯母を描いた一編。私にとって、ジョーン・ディディオンとジョン・グレゴリー・ダンの作家夫婦は、1970年代から1980年代にかけて憧れのカップルだった。彼女が生きた道筋からは懐かしさがミルフィーユの層になってあふれ出て来る。旦那と養女の死のくだりにはショックと涙。悲しさを書き続けるディディオンの、珠玉の英語に触れたくて英語本の「悲しみにたえる者」オーダー。評価:A-。

NETFLIXの人気シリーズ「オザークへようこそ」はシーズン3の#3で停滞していたが、ロケハン途中、チーフ助監督が全篇を見たことを知って追いつくべく、一気に最後まで見た。7話で7時間近くを途中早回しの約4時間で片付けた。ウェンディの弟ベンの登場でシリーズ全体がしっちゃかめっちゃかの感あり。というか、なんでもありの展開で節操がない。しかも、ヘレン役のジャネット・マクティアが今シーズンで終わりと知って最終話でがっくり。ヘレンのいないオザークはもう見る気がしない。評価:第三シーズンはB。

「ROMA完成への道」はNETFLIXで見始め、クライテリオンのDVDの特典映像で見終わった。アルフォンゾ・キュアロン自らが解説する映画術は素晴らしい。名場面が甦り、再び「ROMAローマ」に浸りたくなって一気に見てしまった。何度見ても心の深遠に繋がる万華鏡。卓越した感性の見事な輝き。評価:さらにディープなA+。



ゴルフ帰りに甲府で見たのが西川美和監督作品「すばらしき世界」。導入部、旭川刑務所のくだりにゾクゾクした。これぞ映画、という歓びだ。極上本物のロケ地で、役所広司様が息づいている。絡む康すおん、井上肇も役に同化して申し分ない。笠松則通のカメラも的確に冬景色を切り取っている。「ローマ」に匹敵する真実の味わいだ。

ところが。

よかったのはここまで。物語が東京へ移行した途端、すべてが地に堕ちた。

私は、「ゆれる」を見て以来、西川美和こそ日本を代表する女性監督だと言い続けて来た。その後の「夢売るふたり」、「ディア・ドクター」、「永い言い訳」を見なかったのは、タイミングの問題もあるが、主人公の設定に今ひとつ食指が動かなかったからだ。今回は、役所様のポスターの表情、スチルの表情に惹かれた。彼が熱演していたことは間違いない。問題は、共演者と脚本と演出だ。そうそう、林正樹の音楽も、オープニング・ナンバーの旭川での出だしだけがよくて、あとはおセンチにひしゃげていた。

共演者の何が悪いのか。「ローマ」のキュアロンや「ザ・ライダー」のクローイ(クロエとは発音しない)・ジャオの、アマチュア活用の精神を見習えとまでは言わないが、真摯に社会のシステムにもの申す映画としたいなら、「売れてる顔」は三上役の役所広司ひとりでよかった。

旭川の出演者は先に触れたように役に同化していた。だから三上が見えた。東京勢は、売れている顔が陸続と登場し、すべてがベタな芝居で三上のリアルが消えていく。橋爪功、梶芽衣子、六角精児、仲野太賀、長澤まさみ全滅。



太賀は「淵に立つ」ではニュアンスの芝居が際だって、大好きな俳優のひとりとなった。ここでは、球を置きに行く芝居を強要されたのか、アンリアルで不愉快だ。暴力から逃げる、喪失に泣き喚き騒ぐ、すべてがオーヴァー。シケモクさせる理由もわからない。なぜなら、シケモクするようなヤニクサイ若者ならば、それこそ、13年禁煙してきてキレやすい三上が噛みつくはずなのにそうはならない。不自然だ。

最近巧さが際だつ長澤まさみは、青臭いセリフを押し付けられて沈没。

ちょい役でも不調法な演出が目立つ。その最たる例が「苛立つ女医」というト書きが目に浮かぶ貧乏揺すりの女医。みっともない演出だ。

西川美和は「暴力の装置」や「怒り」に近づかない方がいい。普通の人間もひとつ失敗すれば生きにくい世の中なのに、超高血圧でキレやすく極道根性が抜け切れない前科者が適応できないのは当たり前の話だ。三上のキャラ設定が極端すぎる。役所広司の熱演もってしても嘘っぽい。吠えまくる三上ではなく、切れたら怖い、という三上を私は見たかった。

硬派の社会派ドラマを期待していたら、少女趣味の人情モノを見せられたというのが正直な感想だ。西川美和は日本を代表する女性監督にはなれないが山田洋次監督の後継者にはなれるかもしれない。評価:C。



NETFLIXのウェスタン「この茫漠たる荒野でNEWS OF THE WORLD」こそ「すばらしき世界」と命名して欲しかった。ジョン・フォードのエピック・ウェスタン「捜索者」にちょびっと媚びた久々の正統派西部劇だ。

ポール・グリーングラスにとっても久々の秀作だ。トム・ハンクスよし。脇役もエキストラもワイルド・ウェストの顔だ。

カイオワ族の言葉しか喋ることができないドイツ人少女のヘレナ・ゼンゲルには仰天した。本物の輝きがある。ぐいぐいと惹き込まれる。彼女の運命に泣き、荒野のガンファイトに泣き、ワイルド・ウェストを「瓦版屋」で見せる技巧に泣いた。馬が走るだけで泣けたくらいで、まあ、よく泣いた。少女趣味の人情モノには嫌悪感しかないが、ハードなエッジを生き抜く少女の変転には心が揺れた。評価:A。


「新感染半島/ファイナルステージ」は「新感染/ファイナル・エクスプレス」とは比べようがない愚作。激震が走る幼稚な脚本と演技。評価:C-。


2021/02/22 (月)

ゲーム再開を待ちながら。


次回作の脚本直しとずっとずっと先を見据えたリミテッド・シリーズのオリジナル脚本書きとロケハンと衣装合わせと映像シャワーの日々。

忙しいようで忙しくない。緊急事態宣言で夜が早いから。夜の映画館へ行けない。夜のメシヤもダメ。夜の日本があまり動いていないと思うと、忙しくない風に感じる。忙しい時間帯が限定されてしまうと心理的な多忙感が減少するのではないか。

2月のNETFLIXは「時の面影THE DIG」から入った。キャリー・マリガンとレイフ・ファインズはうまい。が、話が実話とはいえ、お粗末すぎる。俳優出身監督のセンスも悪い。セリフのずりあげが異常。使い過ぎだし長過ぎる。評価:C



NEFLIXドキュメンタリーもよく見た。「REMASTEREDサム・クック」は「あの夜、マイアミで」の影響。リアルなサム・クックは映画以上に黒人の権利を謳う活動家だったのだと納得。未だ闇に包まれているクックの死の真相を知りたくなる。評価:A-。

「ジョーン・ディディオンTHE CENTER WILL NOT HOLD」は俳優グリフィン・ダンが伯母を描いた一編。私にとって、ジョーン・ディディオンとジョン・グレゴリー・ダンの作家夫婦は、1970年代から1980年代にかけて憧れのカップルだった。彼女が生きた道筋からは懐かしさがミルフィーユの層になってあふれ出て来る。旦那と養女の死のくだりにはショックと涙。悲しさを書き続けるディディオンの、珠玉の英語に触れたくて英語本の「悲しみにたえる者」オーダー。評価:A-。

NETFLIXの人気シリーズ「オザークへようこそ」はシーズン3の#3で停滞していたが、ロケハン途中、チーフ助監督が全篇を見たことを知って追いつくべく、一気に最後まで見た。7話で7時間近くを途中早回しの約4時間で片付けた。ウェンディの弟ベンの登場でシリーズ全体がしっちゃかめっちゃかの感あり。というか、なんでもありの展開で節操がない。しかも、ヘレン役のジャネット・マクティアが今シーズンで終わりと知って最終話でがっくり。ヘレンのいないオザークはもう見る気がしない。評価:第三シーズンはB。

「ROMA完成への道」はNETFLIXで見始め、クライテリオンのDVDの特典映像で見終わった。アルフォンゾ・キュアロン自らが解説する映画術は素晴らしい。名場面が甦り、再び「ROMAローマ」に浸りたくなって一気に見てしまった。何度見ても心の深遠に繋がる万華鏡。卓越した感性の見事な輝き。評価:さらにディープなA+。



ゴルフ帰りに甲府で見たのが西川美和監督作品「すばらしき世界」。導入部、旭川刑務所のくだりにゾクゾクした。これぞ映画、という歓びだ。極上本物のロケ地で、役所広司様が息づいている。絡む康すおん、井上肇も役に同化して申し分ない。笠松則通のカメラも的確に冬景色を切り取っている。「ローマ」に匹敵する真実の味わいだ。

ところが。

よかったのはここまで。物語が東京へ移行した途端、すべてが地に堕ちた。

私は、「ゆれる」を見て以来、西川美和こそ日本を代表する女性監督だと言い続けて来た。その後の「夢売るふたり」、「ディア・ドクター」、「永い言い訳」を見なかったのは、タイミングの問題もあるが、主人公の設定に今ひとつ食指が動かなかったからだ。今回は、役所様のポスターの表情、スチルの表情に惹かれた。彼が熱演していたことは間違いない。問題は、共演者と脚本と演出だ。そうそう、林正樹の音楽も、オープニング・ナンバーの旭川での出だしだけがよくて、あとはおセンチにひしゃげていた。

共演者の何が悪いのか。「ローマ」のキュアロンや「ザ・ライダー」のクローイ(クロエとは発音しない)・ジャオの、アマチュア活用の精神を見習えとまでは言わないが、真摯に社会のシステムにもの申す映画としたいなら、「売れてる顔」は三上役の役所広司ひとりでよかった。

旭川の出演者は先に触れたように役に同化していた。だから三上が見えた。東京勢は、売れている顔が陸続と登場し、すべてがベタな芝居で三上のリアルが消えていく。橋爪功、梶芽衣子、六角精児、仲野太賀、長澤まさみ全滅。



太賀は「淵に立つ」ではニュアンスの芝居が際だって、大好きな俳優のひとりとなった。ここでは、球を置きに行く芝居を強要されたのか、アンリアルで不愉快だ。暴力から逃げる、喪失に泣き喚き騒ぐ、すべてがオーヴァー。シケモクさせる理由もわからない。なぜなら、シケモクするようなヤニクサイ若者ならば、それこそ、13年禁煙してきてキレやすい三上が噛みつくはずなのにそうはならない。不自然だ。

最近巧さが際だつ長澤まさみは、青臭いセリフを押し付けられて沈没。

ちょい役でも不調法な演出が目立つ。その最たる例が「苛立つ女医」というト書きが目に浮かぶ貧乏揺すりの女医。みっともない演出だ。

西川美和は「暴力の装置」や「怒り」に近づかない方がいい。普通の人間もひとつ失敗すれば生きにくい世の中なのに、超高血圧でキレやすく極道根性が抜け切れない前科者が適応できないのは当たり前の話だ。三上のキャラ設定が極端すぎる。役所広司の熱演もってしても嘘っぽい。吠えまくる三上ではなく、切れたら怖い、という三上を私は見たかった。

硬派の社会派ドラマを期待していたら、少女趣味の人情モノを見せられたというのが正直な感想だ。西川美和は日本を代表する女性監督にはなれないが山田洋次監督の後継者にはなれるかもしれない。評価:C。



NETFLIXのウェスタン「この茫漠たる荒野でNEWS OF THE WORLD」こそ「すばらしき世界」と命名して欲しかった。ジョン・フォードのエピック・ウェスタン「捜索者」にちょびっと媚びた久々の正統派西部劇だ。

ポール・グリーングラスにとっても久々の秀作だ。トム・ハンクスよし。脇役もエキストラもワイルド・ウェストの顔だ。

カイオワ族の言葉しか喋ることができないドイツ人少女のヘレナ・ゼンゲルには仰天した。本物の輝きがある。ぐいぐいと惹き込まれる。彼女の運命に泣き、荒野のガンファイトに泣き、ワイルド・ウェストを「瓦版屋」で見せる技巧に泣いた。馬が走るだけで泣けたくらいで、まあ、よく泣いた。少女趣味の人情モノには嫌悪感しかないが、ハードなエッジを生き抜く少女の変転には心が揺れた。評価:A。


「新感染半島/ファイナルステージ」は「新感染/ファイナル・エクスプレス」とは比べようがない愚作。激震が走る幼稚な脚本と演技。評価:C-。


 a-Nikki 1.02