2016/06/13 (月) 映画は毒婦だ、ヤマヒルだ。
■ 二ヶ月以上更新せず、というのは初めてだな。新作の準備で忙しいにしても、これは前例のない怠惰。というか、詩人のこころを失ってしまったのかも。脚本ならせっせと書くのに、ロングメイルの類を書くのがつらい。言葉が出ない。
今、京都にいる。新作時代劇のための最終ロケ地チェックだ。京都にいると、心豊かなヴィジター感覚で色々考えることができる。考えていたことを整理することもできる。
久しぶりに「東洞」へ行った。先ずサーモンのマリネと新生姜のアグロドルチェを食した。映画人の心を揺さぶる美味だった。
なぜなら。
天才水谷シェフが取り寄せたサーモンの産地はフェロ島。
イングマール・ベルイマンの終の住処の、あの島である。
ベルイマンも食したサーモンなのである。
それが京都の新生姜および野菜群と出会った一皿なのである。
私はベルイマンの名作を噛み締める思いでいただいた。
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前菜二番手はマルサラワインでマリネしたフォアグラ&オレンジのマルメッラータとブリオッシュ。続くは駿河の赤バイ貝と姫筍のリゾット。さらに全粒粉の平たいパスタ(ブレクス)の粗挽き豚ミンチとオレンジのラグー。
メインの一番手はグアンチャーレと大根のズッパに浮かべた鯛のインパデッラ。で、肉メインは牛肩ロース肉のビステッカ&シチリア産サーレグロッソとライム添えにしようかスペイン産豚ロース肉のアロスト&新じゃがと新にんにくピゼッリーニのピュレにしようか仔羊の香草焼きグリーンタプナード添えにしようか迷った挙げ句、仔羊に。
なんというか。
大奥㊙物語の将軍様になった気分。
ではなく。
映画は毒婦だ、ヤマヒルだ、という思いを抜けた先の、至福のディナーでございました。
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4月23日の夜だったか、突然、映画作りのプロセスは、毒々しい娼婦性をもった美女に誘惑される気分に似ているのではないか、と思い、隅田川に向かってツバを飛ばした。
12階から飛ばすツバは地上に着く時には虫除けスプレーひと吹きの威力もないからだれにも迷惑をかけることはなかった。
5月19日ころになってすべて明白になり、「毒婦の誘惑」を脚本から排除した。詩人のこころで、切り捨てるべきものを切ることができた。というか、「毒婦の棲む映画」から解放された。
そして、きょうの午後、琵琶湖湖畔の林と比叡山で、ヤマヒルの静かな、そして血も凍る攻撃にさらされて、詩人のこころは完全復活したのでした。
撮影が始まるころは、毒婦もヤマヒルも出て来ないので、俳優部の皆様、ご心配なく。
しかし、ドジャースは弱い。みっともない。全盛期の岡野をホーフツとさせる浅野の「勝負しないFW」もみっともない。でもまあ、ドナルド・トランプや舛添都知事や自民党に比べれば、みんな元気で凛々しいよな。
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